食品スーパーのスタンスを保ちつつ新たなふれあいをつくり出す
—株式会社ぎゅーとら—

(data)
株式会社ぎゅーとら
所在地 三重県伊勢市西豊浜町655番地18
代表者 代表取締役社長 清水 秀隆
設 立 昭和4年(1929)
資本金 9,600万円
従業員 1,157名(2013年5月現在)

CS推進課長の大西貞夫さん地場産品が並ぶ『おおきんな』コーナー
CS推進課長の大西貞夫さん地場産品が並ぶ
『おおきんな』コーナー

『ふれあい・たいせつに』のキャッチフレーズは、お値打ち感や品質、幸せな暮らし、お客さま第一などを謳うことが多い流通業界にあって、どことなくユニークな感じ。ぎゅーとらは、1号店のオープンから50年以上の、歴史ある総合食品スーパー。意外にも28店という堅実とも見える店舗展開は、その経営理念にある“地域社会の発展に貢献”というフレーズを、忠実に守り続けてきた証しのようです。


時代に先駆けた地元密着

遠く離れた産地や海外にまで仕入れルートを開拓し、大量買い付けで原価を抑え、いつでも同じ品ぞろえで安定価格・安定供給を目指す…というのが、これまでの大型チェーンストアのあり方でした。ところが最近になって、世間がこぞってもてはやすのは、『地産地消』の四文字。ご存知の通り、「地元でとれた農産品や水産物を、地元で消費すること」です。輸送にかかるコストだけでなく、エネルギー消費やそれに伴う環境負荷も抑え、食育や地域経済の活性化などにつながるから、と期待されています。そんな世相をぎゅーとらは、とっくの昔に先読み・先取りしていました。


始まりは、“美味し国”としての必然から

『地産地消』という言葉が取り沙汰されるずっと前から、ぎゅーとらの店舗には、地元の農家で丹念に育てられたみずみずしい野菜や、近くの漁港で水揚げされたばかりのぴちぴちの魚介類がたくさん並んでいました。豊富な食材を育む自然と、昔ながらの食文化を持つ“美味し国”三重※ならばこそ、地元でとれるおいしい食材を取りそろえるのが、食品スーパーとしては当たり前の役割だったのかも知れません。そうすることが地域の生産者の皆さんだけでなく、彼らと関わる多くの人々や業者をうるおし、地域経済に貢献できる、ひいては食文化や食材を育む環境を守ることにつながる――そんな理論が感覚的に備わっていたのでしょう。


※三重県のプロジェクトでは『美し国』と表記し、広く文化の豊かさを指していますが、ここでは食の話として『美味し国』と表記しています。


地産地消を根づかせる“ふれあい”の提供

ここで注目すべきなのが、ぎゅーとらが長年にわたって繰り広げてきた、“ふれあい”の事業の数々です。消費者が生産の現場をたずね、生産者たちとコミュニケーションする、そのきっかけはただ純粋に「地元産の食材の魅力を知ってほしい」という想いだったのかも知れません。けれど今や、地産地消の普及・啓発になくてはならない企画と言えるでしょう。あいかわらず、外国産の危ない食品や、国内の食品偽装などが世の中を騒がせています。行き過ぎた利益追求の愚かさの裏返しに、クローズアップされるのは地産地消の安全・安心。これをブームに終わらせず、大きなうねりにしていくには、地元の農家や漁師さんなど生産者たちの頑張りだけでは不十分です。消費者の側からも「こんな食材が欲しい」と声を上げ、同時に、生産の現場を知ることもたいせつ。どうやら“ふれあい”事業は、この時代に絶妙の企画だったと言えそうです。


お互いのモチベーションを高める体験企画

“ふれあい”をつくり出す代表的なイベントが、地元農家や漁協の協力を得て開催している収穫(収獲)体験。毎回多くの参加者を集める人気のイベントです。実際に生産地に足を運び、畑や田んぼ、時には海に入って、生きた食材に直接触れると、地元産食材への理解が深まり、生産者の皆さんの顔を見ることで愛着もわいて、「粗末に扱わず、美味しくいただこう」と感じます。一方、生産者の方でも、お客さんたちとじかに顔を合わせ、喜ぶ表情にふれることで「もっと良いもの、美味しいものをつくろう」と励みになっているそうです。


売り場でも広がる“ふれあい”の輪

ぎゅーとらの店舗内で、同じような“ふれあい”効果を生み出しているのが、地場産品を豊富に取り揃えた『おおきんな』※のコーナーです。よく見かける産直コーナーではなく、また、生産者の写真を掲げて「○○さんの□△▽◇」というのとも違います。店舗が立地する、その地域の農家の方々が手塩にかけて育てた作物が並び、おまけに、インターネットで畑や野菜のリアルなようすを公開。どんな人がどうやって育てたのかわかり、数時間前まで畑で育っていたことが実感できる仕組みになっています。だから、買い物中のお客さんが、納品にやってきた農家の方を見かけて思わず話しかけたり、逆に農家の方が野菜のうんちくや美味しい食べ方をレクチャーしたりと、距離感がより近く、まさにインタラクティブ(双方向)なコミュニケーションが生まれています。


※おおきんな:伊勢言葉で「ありがとね」のこと。「ありがとう=おおきに」+「ね=な」→「おおきにな」の「に(ni)」が、発音しやすく母韻を省略されて「ん(n)」になったかたち。


ライフステージに応じて、“ふれあい”を応援

本業を通じた『地産地消』という取組みが、ぎゅーとらと地域のサステナビリティを高める一方で、さらにぎゅーとらでは、本業から派生して、各年齢層やライフステージに応じた“ふれあい”を応援しています。たとえば、就学前の幼児を対象にした「食育&教育」では、昨今のPTAの手に負えないという「餅つき体験」も喜ばれています。小中学生たちには、野球・バレーボール・フットサル・陸上・柔道などのスポーツ教室や大会を実施(食品メーカー等の協賛もあり)。また、料理教室(キッズ、教室など)も開催しています。主婦層に対しても、バレーボールやフットサルの大会はもちろん、多様なコンセプトの料理教室を開催。敬老の日には、お年寄りに感謝を込めて高齢者施設にお寿司を届ける、などさまざまです。


今後はコラボレーションも模索

ここまでお話をうかがってきたのは、CS推進課長の大西貞夫さんです。CSとは、Customer Satisfaction 顧客満足の頭文字。満足度アップのため、日々奔走する大西さんに結んでいただきました、「テレビドラマで有名になった、地元 相可高校とのコラボレーション『青春弁当』は、評判を呼んで、もう8年目になります。こういう企画がいろいろできれば、地域にもっと喜んでもらえるでしょう。今までは、ターゲットの年齢層を分けて、“ふれあい”の応援をしてきましたが、これからは、異なる年齢層同士のコラボレーション企画や、ほかの組織・団体との連携にもチャレンジしたいし、面白いことができそうです。ただし、食品スーパーというスタンスは堅持したうえで、新たな活動を模索していきたいですね」。


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